Sailingコレクションの制作エピソードは、Fantiniのブランドストーリーの中でも特に直接的で力強い。このデザインは、機能的なオブジェクトであるボラード、すなわちボートの係留索を固定する柱の「詩的な再解釈」である。

インスピレーションの源は、「水の世界と、Fantiniのゲニウス・ロキであるオルタ湖」に明確に結びついている。これは極めて重要な点である。デザイナーたちはFantiniの本拠地を訪れ、その土地の精神を吸収し、そのローカルなエッセンスを普遍的なデザインオブジェクトへと昇華させたのだ。このプロセスは、SailingコレクションがFantiniのブランドアイデンティティそのものを具現化したものであることを示唆している。Fantiniの本社はオルタ湖畔にあり、そこはブランドの魂の場所である。コレクションは、その特定の場所の航海要素から直接インスピレーションを得ている。物語主導のデザインで知られるヤブ・プシェルバーグに、Fantiniは本質的に「我々の物語を語ってほしい」という依頼をした。そしてデザイナーたちは、工場の窓の外にその物語を見出したのである。結果として、Sailingは単なる製品ではなく、形になったブランドストーリーテリングであり、Fantiniの伝統、水との繋がり、そして協調の精神を体現している。それは、まさにFantiniの魂から生まれた、ブランドを象徴する製品と言える。