創造の物語は,「形式的な引き算による長いデザインプロセス」である。その目標は,不要な要素をすべて取り除き,「機能の本質に到達する」ことであった。

この厳格でミニマルなプロセスは,驚くべき結果をもたらす。その純粋さにもかかわらず,製品はその「深いポップな魂」を失わない。ミニマリズムと「ポップ」との間のこの緊張感が,コレクションのユニークな概念的フックとなっている。

Nostromo Smallは,このアイデアをさらに蒸留したものであり,「素材を引き算することで創造する」という選択を強調し,さらに「純粋な本質」を達成している 。

Nostromoの「ポップな魂」は,その民主的な純粋さと多様性にある。デザインは「引き算」と「形式的な厳格さ」によって達成されたと説明されており,これはミニマリストのアプローチである。しかし,同時に「深いポップな魂」を持つとも評される。これは一見矛盾しているように思える。ポップアートとは,しばしば日常的で原型的なオブジェクトを取り上げ,それを芸術の域にまで高める。それはエリート主義的ではなく,アクセスしやすいものである。メルカターリは,水栓をその絶対的で普遍的に理解される原型にまで還元することで,即座に認識でき,親しみやすいフォルムを創造した。それは水栓界の「コカ・コーラのボトル」のような存在である。さらに,クローム,マットホワイト／ブラック,様々なPVDといった幅広い仕上げの選択肢により,この純粋なフォルムはカスタマイズ可能となり,アンディ・ウォーホルの版画シリーズのように異なる個性を帯びることができる。「ポップな魂」とは,派手な色や形のことではない。それは,完成された原型的なフォルムが持つ,民主的な魅力なのである。Nostromoが「ポップ」である理由は,その徹底的なシンプルさが,それを普遍的にアクセス可能で多様なアイコンにしているからである。この引き算のプロセスの結果生まれたのは,「時代を超越したクラシック,モダンな水栓の原型」である。そのフォルムは,「本質的で時代を超越したライン」によって定義される。Nostromo Smallは,単にその縮小版であり,兄貴分であるオリジナルモデルの本質的な特徴をすべて保持している。